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2020/10/15

ELCブログ2020.10.15㉗『再開発事業コンサルタントとしての事業化能力』

まちづくりコンサルタントといっても、世の中にはいろいろな人がいます。計画作成が得意な人がいれば、データ分析が得意な人もいる。そして事業化センスのある人もいれば、口だけの人もいる。最近、そのコンサルタントの違いをまざまざと見せ付けられることがありました。


マンション建替え

きっかけは、あるマンション建替えの話です。自然の成り行きで、そのマンションの管理運営を手伝っていたマンション管理士のAさんが、建替えの話を進めていました。そのマンションは新耐震構造の対応が出来ていないので、早々に耐震補強するか建替えるかの結論を出さなければならなくなったのです。

耐震補強するにも一軒当たり300万円近くかかる。しかもそれだけ掛けても完璧に安全とはならない。また、建替えるといっても現況で容積率はほぼ使い切っていますから、建替えてによる余剰床は生み出せず、全額自己負担となる。そういうジレンマの中で、話は、隣接の戸建住宅地と企業敷地を巻き込んだ再開発事業としてやったらどうかという話になっていきました。

しかし、そのマンション管理士のAさんは再開発事業という手法は知っていても事業経験がありませんから、あまり積極的なことは言えません。また、経験がないとはいえ、自分も今後何らかの関わりを持って参加したいという野心がありますから、当然のこと、ボロを出さないようにと慎重になります。隣接の戸建住宅地の人たちにどう話すべきか、下手をして失敗をしてはならないという思いですから、手を出せないままに時間が経っていきました。再開発の専門家を入れたいのだけれども、自分の出番がなくなるような入れ方はしたくないということで、モタモタしているうちに数年経ってしまいました。


実績の力

 しびれを切らした地権者の一人が、密かに再開発事業の専門家のBさんに相談しました。Bさんは内々で簡単な図面と事業計画を作り検討しました。結果、立地もまあまあ、行政の応援も有りそうということで、手を打ち始めました。

 まず、マンション管理士のAさんのやり方に批判的な4人に集まってもらいました。そこで、再開発事業とはどういうふう進んでいくのか、その概要を伝えました。そして地権者にとってのメリット、地域にとってのメリット、行政にとってのメリット等も伝えました。


「単なるマンション建替えならば、建物の解体費用もかかるし、工事期間中の仮住まい費用も自己負担。それに比べると、再開発事業としてやれば、容積率の割り増しがもらえるのみならず、工事期間中の仮住まいの費用も補償されるし、税金も一切かからない。これはもう、宝くじに当たったようなものです。」というと、その人たちは、突然目を覚ましたように、目を輝かせはじめました。

 そういう人たちの賛同の輪がひそかに広がっていき、半数以上の人たちの賛同が得られたところで、管理組合の臨時総会が開かれ、コンサルタントの入れ替えが決議されたのです。新たに選出されたコンサルタントのBさんは、早速、隣接の戸建住宅地や企業にも呼びかけ、全体の勉強会を開催していきました。そして、全地権者の90%以上の方の同意を得て、まず再開発協議会という組織をつくることになりました。「今までの6年間は何だったの?」マンションの人たちの率直な疑問です。


 やがてこの地域では、行政の応援も得て、具体的な事業がスタートすることになりました。。



コンサルタントの能力比較

 さて、ここで、コンサルタントを比較してみます。Aさんは、マンション管理のコンサルタントとしては一流だった。著書もあり、時々シンポジュームもやっていた。人望もあった。しかし、単なるマンション建替えという話から、再開発事業という大きなまちづくりの話になったとき、彼には荷が重すぎた。地域をまとめて、ある方向へ動かしていく経験も能力はなかった。もっと適切な言葉でいえば、事業化能力がなかった。なのに、自分の出番だけは確保しておきたいという自己保身があった。だから事業化能力においてもっとも大切だと思われる「決断」ができなかった。先が見えない不安。これまでの実績を考えると、失敗は許されないという恐れ。それが決断を妨げた。

 

一方Bさん、いくつもの再開発事業を経験しているから、先が見えた。だから適切な手を矢つぎ早に打てた。判断力においては、ほとんど間違いなかった。だから数ヶ月後に再開発準備組合という事業化組織を軌道に乗せることができた。


とはいえ、一般論としては先が見えたとしても、再開発事業地域というのは、それぞれ固有の課題をかかえていますから、状況が読めないことも多い。むしろ、先が読めないことの方が多い。その時、十分に先が見えない状況でも、果敢な態度を取ることができるのか否か、分かれ道がある。それが事業化能力における決断ということでしょう。Bさんもすべてが読めていたわけではなかったはず。しかし、決断した。

決断力から総合力へ

 

事業化の決断をした後、求められるのは、構想力や分かりやすい資料づくりの能力です。そして説明能力と説得力です。

 ただ、ひとりの人格において、これらの能力が発揮できるというのは、稀なケースでしょう。大半は複数人格において分担することになるからです。


理想的なリーダーの資質はこれらの才能を一人で保持している場合です。

再開発事業のリーダーの総合力と言ってもいいかもしれません。


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