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代表ブログ
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2019/12/10

魅力あるまちづくりと生き甲斐づくりのポイントー⑮ 心の共時性

中小企業経営者向けの、あるセミナーで講師をした時の体験です。


夫の涙

その経営者セミナーは夫婦同伴のセミナーで、私は、男性陣のセミナー担当でした。主に経営者の「志」を鍛えるもので、まず心構えを提示し、それについて深く考えてもらい、その後みんなでディスカッションするというスタイルの一泊研修です。全部で10テーマあり、その一つひとつをじっくり考えて、そのあとディスカッションし、深く腑に落として自分自身の経営のあり方を見直していくというプログラムです。

初日、3つ目のテーマの思慧を終えて、グループでディスカッションを始めたとき、一人の経営者の方がハンカチを出して涙をぬぐっていました。「さっきから、どういうわけか涙が出てしょうがないのです」といって、自分の発言の順番が来ても、言葉にならない状態でした。その方は、自動車整備工場を経営されているのですが、なかなか経営が思わしくなくて参加されたのでした。奇妙なことに、そのセミナーが終了するまで目を赤くしたままでした。よほど感動か感謝が深かったのでしょう。少なくとも私にはそう見えました。


妻の涙

すべてのプログラムが終了して、控え室に戻ったとき、別室で「経営者の妻の心構え」というテーマでセミナーを行っていた別の講師も戻ってきました。ごく自然に、お互いのセミナーの成果を反省も込めて語り合っていたとき、相手の講師から、「いやー、今回のAさんの奥様はものすごかったですよ。ご主人に対する反省と感謝が深まって、もう感謝・感動の一泊でした。嗚咽しながら、ずーと涙を流し放しでしたよ」と聞いたのです。私は「え?」と思いました。Aさんというのは私の部屋で突然涙を流し始めた自動車整備工場の経営者の方で、別室の「妻の心構え」で涙を流していたのが、そのAさんの奥様だったからです。

「その奥様が涙を流し始めたのは何時ごろでした?」と聞きますと、午後3時ごろかなといいます。ちょうど私の部屋で、ご主人であるAさんがハンカチを出して涙を流し始めた時間です。私は納得がいきました。以前から、このご夫婦は夫と妻の力関係が逆転しているのを知っていたからです。そして、問題は奥様にあると気づいていたからです。じつは、経営する自動車整備工場も奥様の実の父親が創業したもので、それを婿養子であるAさんが引き継いだのです。だから典型的な婿養子タイプの夫婦で、妻が実権を握り、体も声も大きく、いつもご主人を尻に敷いていたのでした。その男勝りの奥様が深く反省して、ご主人に感謝ができるようになったというのですから、これは大きな驚きです。


妻の反省の効果

事実、この研修後、明らかに奥様は謙虚になりました。「まったく私が間違っていました。本当に主人に対しては小ばかにしていたところがあったのです。男らしさがない、力強さがない、決断力がない、と心の中で責めてばかりいました」。その間違いに気づいたのです。奥様が謙虚になると、不思議とご主人の行動に自主性が出てきました。積極的にコストを下げるための経費節約をし、社員に対しても明るく声をかけるようになりました。すると、社員たちも顧客に対して「その後、自動車の具合はいかがですか」と、すすんで電話がけをするようになったのです。「おかげで、お客様も増え、売上も伸び始めました。さらに、うれしいことに、いつも反発しあっていた二人の娘がとても仲良くなったのです」。このご夫婦の喜びはひとしおでした。


共時性

ここにあるのは、心の世界の不思議です。あるいは心の世界の神秘といっていいかもしれません。婿養子として、いつも弱気で、消極的でおどおどしていた経営者が、奥様の深い反省と感謝によって、ひとり立ちすることができ、会社の経営内容も良くなり、家族間も平和になったのです。奥様の深い反省と感謝が別室のご主人に伝わり、さらに家族全体にこのような成果を生み出したのです。

心理学者のユングはこのような現象を「共時性」と呼んでいます。同じような現象が、全く同時に別の場所で起こることをいうのですが、ユングはこれは偶然ではなく法則であると洞察しました。


このご夫婦の現象は、まさにこの「共時性」でした。

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