前回(④)の話の続きです。
県外からの注文
1~2ヶ月経ったころ、県外からも電話で注文がくるようになりました。「どこでうちのことを聞かれましたか」と尋ねると、「福島のAさんの紹介で」という方が何人もいたのです。Aさんというのは、肺に水が溜まる病気で、あちこちの病院に行っても治らず、ワラにもすがる思いでYさんのところに電話をしてきた人でした。なんの薬も効かず、家でただ寝ているだけという人でしたが、たまたま病状をよく聞いてAさんの症状に見合った薬を、漢方を中心にして調合し、また自然治癒力を高めるための薬も一緒に入れて差しあげたのです。
そのAさん、病院から見放されて寝込んでいたのが、2週間で立ち上がり、3週間で買い物に出かけるようになり、1ヶ月したらスキーにまで行けるようになったのです。驚いたのは近所の人たちです。「どうして良くなったの?」と聞いてくる人たちに対する答えは、ただひとこと。「Y薬局の薬で治ったの」。それが口コミで伝わって、あちこちから電話注文が来るようになったのでした。
バスツアーで来店
さらに驚くべきことが起こりました。ある地方銀行の新潟支店が、社員旅行の東北バスツアーの帰りに、バスごとYさんのお店に立ち寄って、みんなそれぞれ大量に薬を買い込んで行ったのでした。もちろん一人一人の健康状態を、Yさんは順番に聞いて対応していったのです。バスツアーのスケジュールの中には、その薬局での健康相談の時間も取ってあったからです。
このバスツアーの話は、商店街の多くの店主たちにも伝わりました。当然、直接聞きに来て仕事の仕方を真似する人も出てきました。
利他の念いがすべて
パナソニック創業者の松下幸之助氏も書いています。昭和初期の不況で物が売れなくて困っている時に、松下の製品には、工場の工員たちの誠実な「念い」が込められ、また国民みんなに豊かになってほしいという販売店の強い願いが込められていたので、他社に負けずに売上が伸びてその不況を乗り切ったこと。そして製品は単なる物ではなく、作る人や売る人の「念い」が製品と一緒に伝わっていくのだということを実感したということ等。このようなことを松下氏は書いています。(『私の行き方 考え方』PHP文庫)
結局、モノをつくるにしても、モノを売るにしても、「念い」が大切だということです。ビジネスをするにはどういう念いで取り組むのかが問われるわけです。心の底から相手の顧客のことを考えているのか、単なるテクニックだけの顧客満足なのか。その波動は、明らかに商品と共にお客様に伝わっているということです。だから、やはり根本は自分に帰ってきます。「自分の心の奥底にいかなる念いがあるのか」ということです。相手の幸せを願う心、「利他の念い」こそ大切にしなければなりません。
ところが、世の中のほとんどの企業がこういう「お客様のために」とか、「顧客満足」という理念を掲げているのに、その結果は同じではありません。同じようなポリシーを掲げつつも、売り上げが伸びない会社や利益が出せない会社は山ほどあります。なぜでしょうか。
結果がすべてを物語っているという観点で言えば、その「念い」は『ニセモノ』である、あるいは『うわべである』、と言わざるを得ません。
顧客満足を看板に掲げつつ、賞味期限を偽ったり、経理をごまかしたりして一時的に利益を上げることはできるでしょう。しかし、そういう『ニセモノの念い』はいつかは必ず露呈していくものです。
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