お宅のルルはよく効く
東北・青森県のある市にY薬局という、知る人ぞ知る薬屋さんがあります。外見は何の変哲もないごく普通の薬屋さんですが、このお店は多くの固定客を抱えていて繁盛しています。全体的には衰退しつつある淋しい商店街の一角にあるのですが、「お宅のピップエレキバンはよく効く」といって、2~3軒の薬屋さんを通り越してわざわざY薬局に足を運ぶお客さんもいれば、「お宅のルルはよく効く」といって、大ビンのルルを数箱まとめ買いしていくお客さんもいます。こういう熱烈な固定客が何人もいてこのY薬局は大繁盛なのです。これは何か秘訣がありそうだということで、取材に行ったことがあります。お店は、Yさんご夫妻とYさんのご両親で経営しているお店です。「何かきっかけがあるのでしょうね」という、Yさん(奥様)への、私の問いかけから始まりました。
商売繁盛のきっかけ
「2年前の夏のことでした。急に父の具合が悪くなって、日に日に衰えていったのです。お店番をしている後ろ姿を見ても、とても小さくなってしまい、はーはー、ぜーぜーと苦しそうで、もしかしたら、このままあちらの世界に逝ってしまうのではないかと心配になりました」。
「ある夜、やさしかった父のことを思い出しながら、過去を振り返っていると『はっ!』と気づくことがあったのです。いつもはお店に来るお客様に対して『体を治すには、心の持ち方も大切ですよ。あまり自分のことばかり考え過ぎないで、まわりの人のことも考えるようにしましょう』といってきた張本人の自分が、いまは自分のことしか考えられなくなっている。ただただ『早く父に治ってほしい、早く父に治ってほしい』と、そればかりを考えている自分に気づいたのです。
しかも自分の心の底をじっと見つめてみると、本当に父の病気を心配しているのではなかったのです。本当は父がいなくなるとお店に出る回数が増えて私が困るから、という理由で父の病気の心配をしていたのでした。身勝手な都合のいい自分がいたのです。これではいけないと、その翌日から、私は自分の思いを切替えました。お店に来るお客様というお客様に対して『苦しい時ほど、他人のことを考えるようにしましょうね』『治りたい、治りたいと執着するより、心を解き放って他人のことに関心を向けたほうがいいですよ』などと心をこめてアドバイスしました。手がはれて痛いという人が来ればその人の手を両手で抱え込んでさすってあげたり、また悲観的になっている人がいれば、心のもち方の大切さを書いたパンフレットを紙袋の中に入れて差し上げたりもました。また薬の卸問屋さんにも電話して、自分の思いの変化を伝えていきました」。
家庭調和が豊かさの源泉
ちょうど同じ頃、お父さんのことを心配したYさんのお母さんもまた、自分の夫に対して感謝が足りなかったことに気づいて、深く反省していたといいます。Yさんの気づきと、Yさんのお母さんの気づきと両方が相乗効果をもたらしたのでしょう。
数日して、気づいてみると、Yさんのお父さんはもとの元気ではつらつとした姿に戻っていたのです。再び冗談もよく出るようになったのです。
その直後、薬局の一日の売上が過去最高を記録したのでした。Yさんは言いました「家庭調和というのは豊かさの源泉ですね」。確かに「家庭調和」というのは、個人営業や家族営業のような形態の場合にはとくに重要な要素です。
だから、その後も売上は順調に伸びつづけたのです。
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