街の活性化に関する企画・プロデュース業務 株式会社ELC JAPAN
代表ブログ
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2019/05/10

魅力あるまちと生き甲斐づくり・そのために必要なこと―①情熱が再開発推進の危機を救う

再開発推進の危機

都内における第1号の再開発事業での話です。再開発事業を推進していくには、できるだけ早いうちにディベロッパーを決めなければなりませんが、その地区では再開発後の民間企業の関心があまり無くて、結果的にある公社が、自治体から請われて仕方なくディベロッパーとして参加することになりました。


何とか計画も進み、権利者の人たちへの具体的な数字の提示となった段階で、どうしても賛成できない人が出てきました。これでは、自分は賛成できないと、ゴネ始めたのです。しかし、基本の条件はみな同じです。その人だけ特別扱いするわけにはいきません。膠着状態が続いているころ、その公社(ディベロッパー)に近隣からクレームが入りました。地元でも賛成していない事業を強引に進めて、近隣に迷惑をかけるのは許せない、と匿名の電話が公社に入ったのです。地区内部の権利者が近隣と同通して、反対を煽っていることが明らかになってきました。


公社としては、このように、内部と外部の両方から反対が出てはもう事業協力は続けられません。地元で緊急説明会が開かれ、その席で公社がこの事業から撤退すると言明したのです。「このように、内部の反対者が外部と同通して反対を煽るとは、すでに私たちとの信頼関係が失われた。当社はこの事業から撤退せざるを得ない」


純粋にこの事業に賛成し、今まで協力してきた権利者の人たちは、寝耳に水という感じで、動揺が広がりました。裏に流れる河川の拡幅工事とセットで考えていた事業ですから、このタイミングを逃すと最早まとまった区域としての再開発はここで終わりとなってしまいます。地主である大手保険会社所有の底地に39名の借地人がいる、という地域の特殊事情を考えると、この公社が降りた時点ですべてが終わりとなってしまいます。地主の保険会社は再開発事業しか認めず、個別建て替えとなれば、厳しい建替承諾金が要求されることは分かっていたからです。


公社は自分たちの主張だけすると、さっさと帰ってしまいました。後に残された権利者はこの再開発がいかほど自分たちの夢だったか考えると、失ったものの大きさに泣き出す人まで出てきました。混乱の極みです。

 

一人の情熱が危機を救う

そのとき、一人の男性が立ちあがりました。今まではおとなしくて、会合ではほとんど発言などする人ではなかった人が立ちあがって「これまで自分は、傍観者で人任せだった。けれども、今やっと目が覚めました。この事業はここでつぶしてはならないと思います。もし、今からでも間に合うなら、追っかけて行って公社の人たちをもう一度、ここに迎えたい。そして、近隣の問題も私たちで解決すると伝えたい。そうしないと、必ず後悔する。私たちが生きる道は、そして子孫に残してやれるのは、この再開発しかない。皆さんもう一度公社と一緒にやりませんか」


この人は、涙を流しながら訴えたのです。この涙ながらに訴えた人は、当時でも珍しい習字用の毛筆を手作りで作って販売している職人でした。職人ですから口数も少なく、黙々と仕事をする人で、あまり目立たない人でした。その人が立ち上がったのです。彼の涙につられて、みんなも涙を流し始めました。「そうだ。そうだ。もう一度やろう。みんなで頑張ろう」あちこちで声が上がりました。


そのあと、この会合を緊急総会に切替えて、もう一度公社を迎え入れようと決議され、全員が今までの条件で了承するという、再開発の同意総会に切り替わってしまいました。その後の、事業のスピードは目を見張るばかりでした。そして数年後に、この事業は完成したのです。今でも、涙の総会として知られている、東京のある地区での話です。

 

要は、まちづくりをすすめるには情熱が必要だということです。1人の真剣な情熱があれば、周りを動かしていけるということを、この再開発の事例は伝えてくれています。情熱さえあれば道は必ず開けるのです。

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